
コラム|中小企業再生支援協議会の活用
弁護士の田中です。
我々弁護士は日々、中小企業の方々から様々なご相談を受けています。もちろんみなさん法的なアドバイスを求めて来られるわけですが、やはり話の中で必ずと言っていいほど出てくるのが資金繰りについての悩みです。
特に中小企業金融円滑法終了(平成25年3月末で終了予定)まで半年を切った今、これまで返済猶予されていた債務の支払いが始まり、早期の経営改善計画や抜本的な事業再生に迫られてしまう中小企業の方々も多いと思います。
そこで、今回のコラムは、「中小企業再生支援協議会」の活用についてお話ししたいと思います。
1 中小企業再生支援協議会とは
(1)中小企業再生支援協議会(以下「協議会」といいます)とは、中小企業の再生への取り組みを支援するため、産業活力再生特別措置法(平成11年8月施行)に基づき経済産業大臣の認定により設置された機関です。
中小企業といってもその事業内容や課題が地域により異なるため、現在では各都道府県ごとにそれぞれ協議会が設置されており、各都道府県の商工会議所、商工会連合会、政府系金融機関、地域金融機関、中小企業支援センターや自治体などから構成されています。
(2)また、協議会は中小企業(債務者)や金融機関等(債権者)の代理人として動くのではなく、公正中立の第三者機関として、中小企業の再生計画の策定支援や金融機関との調整を行います。
2 協議会の支援スキーム
(1)協議会の支援スキーム(支援手順)は、まず一次対応として「窓口相談」、二次対応として「再生計画策定支援」という流れになります。
「窓口相談」とは、協議会に事業面や財務面の再生等について直接相談することをいいます。相談企業の課題に応じ常駐専門家がその解決に向けたアドバイスを実施するのが一般的です。この窓口相談により協議会が再生計画を作成して金融機関等と調整する必要があると判断した場合、二次対応(再生計画策定支援)に移行することになります。
(2)さて、その「再生計画策定支援」ですが、まず弁護士や公認会計士などの専門家による個別支援チームが構成され、そのチームによる財務や事業のデューディリジェンス(会計監査・法務監査)を実施し、その調査結果を踏まえ再生計画案を策定していきます。
具体的な再生計画例としては、新会社への採算部門への営業譲渡(旧会社は法的整理で清算)、金融機関による債権放棄や債務圧縮と金融機関のリスケを組み合わせたもの、等が挙げられます。
3 協議会を活用できる中小企業とは
協議会は、中小企業の再生支援をその目的としているので、当然支援対象企業は中小企業です。
協議会が対象とする「中小企業者」は産業活力再生特別措置法第2条第15項に定義されています。
具体的には、
①資本金の額または出資総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(一部除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
②資本金の額または出資総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、卸売業(一部除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
③資本金の額または出資総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、サービス業(一部除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
④資本金の額または出資総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人であって、小売業(一部除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
⑤資本金の額または出資総額並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で業種に属する事業を主たる事業として営むもの
等です。
4 協議会のメリット
(1)協議会を利用するメリットは様々ありますが、主なメリットは以下のとおりです。
・専門家の協力を得られること(特に二次対応)
・法的整理より柔軟な再生計画が可能
・法的整理に比べ信用棄損が少ない
・債権者間における支援の衡平性確(メーンバンク寄せの防止)
・信用保証協会の協力が得られやすい
(2)他方、再生計画上の債権者は金融機関に限られ商取引上の債権者は含まないこと、再生計画を実行するためには対象となる債権者全員の同意を得る必要がある、などの点が協議会を利用する際のネックになる場合があるかもしれません。
5 弁護士の活用
今後、協議会を利用した再生は注目されていくと思われます。ただ、未だ認知度がそこまで高くないせいか、この協議会自体の存在を知らない方や法的整理との違いがわからない方が多くいらっしゃると思います。
我々弁護士にご相談いただければ、法的整理との違いを含め協議会の中身について詳しくご説明します。
特に当事務所では代理人として協議会への相談に同行し、状況説明も行います。まずはお気軽にご相談ください。
次回は、法的整理を中心とした企業再生について佐々木弁護士がコラムを作成します。